拍手お礼小話。
アレン様と神田さん。
1
「神田、ちょっと見ないうちにまた痩せたんじゃありませんか?!」
「うるせぇモヤシ」
「神田の腰が細いのはいつもですけど、この辺の手触りがまた、」
「それ以上言うと斬る」
「ええ?!だって僕神田が心配で心配でっ!!ただでさえ食が細いんですから。単なる夏痩せならいいんですけど、
その、夜、無理させすぎたかなとかですね!!反省してるんです」
「大声でいうんじゃねえ!!反省すんならするだけじゃなく誠意を示せ!!」
「ええっ?!で、でもですね、食べ物と一緒で、もう一回見ちゃうと抑えきかないって言うかですね、神田は少しは自
分の綺麗さとか華奢さとか可憐さとか、そんなのを自覚すべきなんですよっ!!その綺麗な顔で恥らって真っ赤にな ったとこなんて想像するだけで僕・・・・、回数控えるなんて無理です!!それどころか、任務中でも抜けます!!」
「だ れ が!!んな破廉恥発言をしろと言った!!しかも食べ物と一緒でってなどういうことだコラ!!お前がオレを
どういうふうに認識しているか今きっちりと理解したぜ!!」
「じゃあ僕のこの溢れんばかりの愛も理解してくれたんですね!!分かっていただけたところでもう1回しません?真
っ赤になった可愛い君を見てるともう手加減できそうもないんですけど」
「ふざけんな!!」
無意識下でアレン様に惚れている神田さんは迫られると拒めません。
ほとんどムクツナと変わらない会話ですみません。
でもこの2人意外と被る気がします。
2
「一つ、お願いがあります」
「オレも一つ頼みがある」
「僕の子供を生んでください!!」
「オレの子供を生みやがれ!!」
それはほぼ同時に発された言葉だったと、ラビは記憶する。
次の展開も同時だった。
すなわち、イノセンスの発動。
「今、なんていいました?!」
「テメェこそ、今なんつった?!」
イノセンスを発動させたまま器用に互いの胸倉を掴みあげて睨みあっている。
「・・・・」
ふ、とアレンが黒々しく笑った。
「まさか僕が女の子に見えたとか言い出すつもりじゃないですよね、このポニテ」
「そのまさかだが」
バカ正直に答える神田。右カウンターを思い切り食らって吹っ飛ぶ。
壁をぶち抜いて瓦礫を作りながらも、打たれた鳩尾を押さえて神田もしかめっ面でアレンを睨んだ。
「つかテメェこそどうなんだ?!オレのことそう思ったんだろうが!!」
多少ふらつきながらも立ち上がる神田に、アレンは当然のように力説する。
「思いましたよ!!思いますよ!!だって神田すごい美人で!!それで女性でないなんて、なんていうか思いっきり
詐欺ですっ!!」
「詐欺で悪かったな、この白髪!!」
「でも、神田のとりあえずの性別が男性でも、剥いてみたら実はこっそり女性だったりとか!!神懸りな美しさの神田
のことだから、実はこっそり、妖精さんとか天使さんだったりしても僕、僕、ちっとも驚きはしないんです!!むしろ大 歓迎です神田ぁっ!!」
「夢見がちもたいがいにしろ、この妄想キング!!」
ぺし、と神田はなぜか涙目になって力説するアレンの頭を容赦なくはたいた。
アレンはめげることなく、夢見る瞳を神田に向けてくる。
神田はそれをねめつける。視線は数秒絡み合った。
ぽつりと、おそらくは互いが同時に考えていたことを口に出したのはアレンだ。
「で、妥協点が、あると思いますか?」
ふん、と神田は溜息をついた。アレンが再び口を開く。
「だいたいですね、神田は僕のことが好きなら、この際受けでも我慢できるくらいの愛情は僕に対してないんです
か?!」
「テメェこそ、そこんとこどうなんだ?!」
「僕は、攻めでいかせてもらいたいです!!」
「だからそれじゃあなんも解決せんだろがっ?!テメェこそ、オレが好きならそんくらいどっちでもいいくらいの心意気
はねえのか。つか譲れ。オレのが年上で、身長もあんだから」
「年上も身長も関係ないです!!華奢さで言えば神田のほうが僕よりずっと、」
「テメェも十分華奢だろうが」
「でもでも!!僕より神田のほうが女顔ですっ!!」
「そりゃテメェもだ!!ケンカ売ってんのか!!」
「いいえ!!褒め言葉です!!」
2人の会話は結論を得ないまま延々と続くらしかった。
ラビは思った。
この先この2人がなにをどうしようと、全てにおいて我関せずを貫こう。
間違っても。そう、間違っても、どちらが上だとかそういう話は聞かないようにしよう。
存在を忘れられているのをいいことに、そそくさとその場を後にする。
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