拍手お礼小話


ヒバツナ


何も言わずに、ぽいと投げ出されたものを、綱吉は反射的に受け止めた。
そこまでの反射神経はリボーンの教育の賜物だといっていいが、今現在そんなことはどうでもいい。
箱。ブルーのリボンのかけられた。
彼から飛んでくるものなど、一生、トンファーか蹴りかのどちらかだろうと思っていただけに、それは衝撃だ。
「・・・・ヒバリさん、」
なんですか、これ。
そう続けられる予定の言葉は、呼びかけた本人にあっさりと遮られた。
「うん。君にあげる」
「・・・・」
それはどういった志向で、とか、聞きたいことはそれほど山ほどあったが、彼を前にそれらはうまく言葉にならない。
もしも機嫌を損ねたらという怯えがあるからだ。
とにかくいい方向に受け止めようとつとめる。
ええと、誕生日だから、ってもう一月も前の話だけどな!!ええと、クリスマス?!それ、一月は先の話だから!!
とにかく時期も中途半端なのだ。綱吉に何かプレゼントをもらうような心当たりはない。
たとえその時期に該当するとしても、ヒバリからもらうような事態は完全に予想外だ。
知らない仲ではないが、かといって仲がいいわけでもない。というか、暴力的な意味で、一方的だ。
もしかしたら!!と綱吉は閃く。
これ、いいプレゼントなんかじゃなくて、不幸の手紙的なものなんじゃ。
いつも素早く直接攻撃のヒバリさんに限って、不幸の手紙なんて間接的な嫌がらせをするはずもないが、そうではな
くて単純にリボーンへの貢物かもしれないし!!
「あ、開けてもいいですか?!」
「・・・・好きにしたら」
ふいっ、と不機嫌そうに視線を逸らせて、それでも雲雀はダメだとは言わなかった。
つか、耳が赤い。照れてる?!並盛の秩序の風紀委員長様が?!
リボーンのだ!!絶対リボーンへの貢物に決定!!つかそうであってくれ!!
あまりの恐ろしさに死ぬ気で祈りたくなる綱吉である。
しかしリボーンへ渡すものなら、ヒバリは本人に渡すだろうし、綱吉に開けていいとも言わないだろう。
そう気づいていながらその可能性に蓋をしたい気分で、綱吉はぱりぱりと箱の包装をはいでいく。
「・・・・」
これってどういう意味ですかヒバリさん悪い冗談ですかそうなんですねええそうでしょうともそうといってくださいお願い
しますヒバリさん。
「・・・・どう?」
ヒバリから声がかかる。綱吉は混乱している。
ええっと、オレはなんてコメントすれば。
「気に入ってくれた」
ええええ?!
つかなんでプレゼントがもらえるのかもわからない上に、もらったプレゼントがこれだった理由もよく分からないけど、
気に入ったとか入らないとかって問題でもないような気がする。
でも気に入らないなんていえない!!ついでに何でこれなのかなんて問いただせもしない!!
よりによって、あの雲雀恭弥からのプレゼントが、黒いパジャマなのか、なんて!!
「・・・・は、い。ありがとうございます・・・・」
それ以外にどう答えろと?
いや別にパジャマは質のいいものだとは思いますよ。シルクっぽい手触りが、綿100パーのパジャマしか着たことの
ないオレにはすげーゴージャス感を伝えてくるし。
もしかしてこれってヒバリさんが入院してたときに着てたパジャマとお揃いとか言い出さないよな!!
てか、そういう問題じゃなくて!!
綱吉は慌てて言う。
「でも!!オレ、こんないいものもらえません!!」
値段を聞かなくても高いものであることはわかる。いくらなんでもただの先輩にこんないいもの、理由もなくもらえな
い。
「君さ」
「はい」
「僕の子供を生みなよ」
「はあっ?!な、なんでー?!つか、無理!!オレ、男です!!」
「うん。それでもいいよ。僕が気に入ったから。よろしくね」
「いやいやいやいや!!何を勘違いしてるのか知りませんけど、よろしくできませんから!!」
「試してみないとわからないだろ?」
人間何事もできないと思うからできないんだよ、なんて至極当たり前のように平坦な顔で言ってのけて、ヒバリは距
離を詰めてきた。声を上げるまもなく、顔が近い。
「わかる!!わかりきってますから!!ち、ちょっと!!ヒバリさーん?!」
そういう種類のことも確かにあるだろう。けど、それだけは絶対に違うと断言できる。
試してみようと、できると固く信じて挑もうと、
「無理なもんは無理!!生物学的に無理だから!!」
そんな綱吉の声は空しく応接室に響くだけだった。


ムクツナ


むすっ、と子供のように拗ねる男に、綱吉は溜息を向けた。
「なに拗ねてんだよ骸」
つかなんでオレの部屋で拗ねるんだよ。黒曜ランドでやれよ。
城島さんとか柿元さんとかのほうがもっと構って優しくしてくれそうじゃん。
「綱吉君には教えません」
完全に拗ねきった口調で言われたりする。
あーもーなんなんだよ!!
「あっそ。ところで今日、夕飯食べてくんだろ」
「・・・・」
体育座りで背を向けた骸がぴくりと反応する。
「なにが好きとかあるか?今なら母さんにリクエストできるけど」
「・・・・オムライス」
「・・・・あ、そう」
母さん、今日オムライスにしてー!!骸泊まるからー!!
と階段の下に向かって叫んでおく。
「ちょっ?!泊まるなんて、誰が言いました?!」
わかったわ、という返事を聞いて、綱吉はもう一度骸のほうを向いた。
「ほら、もう決定。泊まってけば」
「全く君は・・・・、もういいです」
ぷいっとまた後ろを向いてしまった骸にもう一つ溜息を送る。
どんな言葉を言おうとも、骸が本気で嫌がっていないのがわかるから、とりあえず綱吉は気にしない。
骸は後ろを向いてしまったから、その表情はうかがい知れなかった。
子供みたいだと思う。
大人びて見えるのに、妙なところで見た目よりはるかに大人気ない性格をしているのは承知しているが。
耳元に鉛色のピアス。
「・・・・なあ骸ー。それ、重くないの?」
「・・・・」
返事はない。
骸の後ろにしゃがみこんで綱吉はその耳に手を伸ばした。
ひやり、と冷たい耳に触る。
「なっ、何をするんですかっ?!」
構わず暖めるように両手で両耳をぎゅむ、と押しつぶす。
「骸の耳、冷たかったからさ」
「・・・・」
「ところで何で拗ねてんの?」
「・・・・」
「もう拗ねるなよ、子供じゃないんだからさ。まあお前ってへんなところで子供みたいに純粋で残酷だけど」
「勝手なこと言わないでくれませんか。これだからマフィアは」
「オレのアンパンマンキャラメルコーンやるから」
「・・・・も、ものになんかつられませんよ・・・っ!!僕は六道骸なんですから!!」
「はいはい」
「ところで、綱吉くん。一つ質問があります。アンパンマンのキャラメルコーンとそうでないもののキャラメルコーンの違
いってなんですか・・・・?」
「ピーナッツが入っていないだけ」
「そうですか・・・・」
何を期待してたんだろう。
沈黙。
ぽつりと骸が言った。
「ところで綱吉くん。僕の子供を生みなさい」
「・・・・お前いっぺん死んで?」
笑顔で言われるより、ぽつりと寂しげに、その上言葉だけ高圧的に言われると、もうどこまで本気かわかんない
よ!!



電波とボンゴレ10代目

「ちょっと見ないうちにまた痩せましたか、ボンゴレ」
「そうかな、あ?」
「君の体が華奢なのはいつものことですけど、この辺の手触りがまた、」
「さっ、触るなよ変態!!」
「いいじゃないですか、少しくらい減るもんじゃなし」
「お前の触り方はやらしいんだよ!!」
「夜はもっといやらしい触り方をしているのに今更?」
「うわーうわーうわー!!何言っちゃってんのこの人!!」
「今更何を恥らってるんですか。まあそこが君の可愛いところですけどね。僕は君が心配なんです。ただでさえ食が
細いんですから。単なる夏痩せならいいんですけど、その、夜、無理させすぎたかなとかですね!!反省してるんで
す」
「大声でいうんじゃねー!!反省すんならするだけじゃなくて誠意を示せよ!!」
「ええっ?!でもですね、綱吉くんは少しは自分の可愛さとか華奢さとか可憐さとか、そんなのを自覚すべきで
す!!その可愛らしい顔で恥らって真っ赤になったところを想像するだけで僕は・・・・、回数控えるなんて無理で
す!!それどころか、任務先でも天国にイけます!!」
「もう勘弁してー!!何言ってんの骸お前、オレはお前が一番恥ずかしいよ!!」
「ところでもう1回しません?真っ赤になった可愛い君を見てるともう手加減できそうもないんですけど」
「話通じねえぇぇ!!」

顔だけはいい骸に、ツッ君はいつも押し切られます。



雲雀恭弥と沢田ツナ

「君、少し痩せた?」
「え、そんなことはないと思いますけど」
「確実に痩せたね。だってここのラインの手触り、もう少し丸みを帯びていたはずだよ」
「そ、うですかね」
「なに、文句があるの。僕がそうといったらそうなんだよ」
「いやいやいや!!文句なんて、滅相もない!!」
「そう。ならいいよ。でも君、もう少し太るといいよ。痩せすぎ。いつも抱きながら、アバラ折るかと思うんだ」
「ええ?!オレ、いつの間にそんなピンチに立たされてたのー?!」
「うん。君が僕にぐちゃぐちゃにされてわけわかんなくなってる時じゃない。細すぎる君が悪いんだよ」
「ぐちゃぐちゃって!!しかもそれ、オレのせい?!いやいやいや!!ヒバリさん、いつも思うんですけど、もう少し手
加減とか、」
「手加減?僕がするわけないじゃない」
「ですよねーですよねー。でもヒバリさんヒバリさん」
「なんだい?」
「それでオレが本当に骨折ったりしたら、しばらくおあずけになりますよ?」
「・・・・できるよ。ただやるだけならね」
「え、」
「僕は別に君が半分死にかけて血まみれでも、君ならそれでいい」
「オレの都合とか、」
「僕がそんなもの考えると思うの」
「ヒバリさんって鬼畜だー!!」
「なに、うるさい子だね。今頃気づいたの」

どさくさに大告白のヒバリィ。気づかずスルーのツッ君。




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