例えばこの瞬間がなかったら、僕は君を気にしなかったろうか。


クローズユアアイズ





強いのか弱いのか分からないから、殺してしまおう。





それは雲雀恭弥主観の、綱吉に向ける唯一にして絶対の第一印象だ。

難解な物の数は少ないほうがいい。減らすことそのものは至極簡単だ、殺してしまえばいいのだ。
いつもならそれを実行することを躊躇したりはしない。

だが今回は他にもまだ気にすべき点があった。あの幼児の事だ。

あれをただの幼児と呼んでいいものかと聞かれれば、かなり疑問は残るが見た目幼児なものを他に表現する方法と
いうのもとくには見当たらない。

とりあえず幼児という仮定の下、疑問は頭の中の、未処理と記入された箱に押し込んでおく。

沢田綱吉について、調べられる範囲のことは全て調べた。もちろん、群れていた他2名のことについてもだ。
それでも分からないことのほうが多かった。
沢田綱吉に関してだけ言うならば、調書に記された情報の内容は何の変哲もない、ごくごく一般の家庭の、標準より
ややダメ寄りの男子中学生だ。

だがそれだけでは到底説明のつかないことが存在することをもう雲雀は知ってしまっている。

そして全ての核が結局は沢田綱吉という人間に繋がる気がするのだ。

雲雀は調書をぱさりと投げ出して嘆息した。





やっぱり、あの幼児も他2名も含めて、わからないからそのうち咬み殺そう。





結局雲雀は考えることをあっさりと放棄して、心地いいとさえ感じる凶暴な想像に身を委ねた。

そんな考えに支配される一瞬が、なによりも雲雀にとって楽しいと思える瞬間だ。
それ以上でもそれ以下でもなく。





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